第一回 対談 コスモスイニシア藤田太×甲斐徹郎
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環境の世紀と呼ばれる21世紀の住まいはどうあるべきか。このテーマを掘り下げて実践していくことが「新浦安環境住まい会議」です。

藤田: はじめまして。コスモスイニシアで商品企画を担当しています藤田と申します。さて今回、甲斐さんをこの会議に迎えたのは、甲斐さんが提唱している「自分のためのエコロジー」にとても共感したからなんです。この考え方は、まさにこれからの時代にフィットするコンセプトだと思います。
甲斐: 「エコロジー」というと、「地球環境のため」とか「子どもたちの未来のため」とか、ついお題目を考えてしまいますがなにより大切なのは、がまんせず、まず自分が快適になることを優先することなんです。
藤田: 時代は、そういうパラダイムになってきているということですね。
甲斐: すきま風が吹き込む木造住宅など、住宅が単体では成立し得ない依存型の技術しかなかった時代には、それを補うために共生関係が生まれます。このパラダイムを私は「依存型共生〜不便だけど豊かな時代」と位置づけています。このパラダイムに対し、高度成長時代を境に自立型の技術を手に入れた現代の「自立型孤立〜便利だけど豊かでない時代」は、住宅も住まう人も自分だけでよくなり、隣人や環境と共生する必要がなくなり、家も人も孤立、それがいまの時代がかかえる課題だと思います。
藤田: 便利になった分、人と人、さらには人と環境とのつながりが希薄になってきている。だから最近は、コミュニティというコトバをよく目にするのだと思います。


甲斐: 具体的に言うと、最初のパラダイムでは、防風林や藁葺き屋根の家など、共生関係が必然的に生まれる生活があり、それが街並みやコミュニティをカタチづくっていたのに対し、いまの「自立型孤立」のパラダイムでは、個人は外環境とも他人とも関係を持つ必要がなく、孤立した住環境をつくり、街並みも統一感のないランダムなものになってしまっているということがあります。
藤田: 確かに30年前に比べると、日本の街並みはずいぶん変わりましたし、昭和の家と平成の家では、隔世の感があります。
甲斐: だからといって私は昔に帰ろうなどとはいいません。人は一度、便利さを手に入れたら後戻りすることはできませんし、環境のためだからといって、きゅうくつなことやがまんを強いることは間違っていると思うのです。なぜなら誰でも快適を求めますし、快適でないことは長続きしないからです。
藤田: だから次のパラダイムは、「自立型共生〜便利さも豊かさも同時に手に入れる時代」でなければならないとおっしゃるわけですね。
甲斐: そうなんです。次のパラダイムは、エコロジーのためにがまんしたりするのではなく、自分というエゴの快適を追求していくと、実はそれがエコになるというエコロジーです。
藤田: それが「自分のためのエコロジー」であり、自分を出発点とするエコロジーこそが、隣人を、街を、さらには地球をエコにしていくということですね。
甲斐: 本来、環境とは「自分からつながるすべてのこと」です。まず自分という出発点ではじめないとダメなんです。
藤田: だから「経堂の杜」をまずつくられたのですか。
甲斐: ええ。まず自分から始める。それが、住まいづくりだったんです。
藤田: ぜひ次回は、「経堂の杜」のお話を聞かせてください。


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