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今回は、BGMをかけたり「歌を歌う」行為によって得られる、ケアする人と認知症の高齢者の相互作用に与えるポジティブな影響についてご紹介します。
認知症の高齢者の中には、多くの問題により、他者とのコミュニケーション能力が低下している方が見られます。問題には、失語(会話やその理解が困難)、失認(人や物の認識が困難)、失行(行動や意思表示を自発的に行う事が困難)が含まれます。さらに認知症が進行すると、徘徊、興奮、攻撃性や全体的な混乱が、伝達能力をかなり危うくします。
このような時に、BGMをかけることで、ケアをする人が言葉による説明を減らしても、認知症の方が状況を理解することが出来たというケースが報告されています。また、認知症の高齢者の心を鎮める効果が見られるという場合もあります。
さらに、ケアする時に、認知症の高齢者が好んでいる歌を歌うことで、話しかけや説明が明らかに少なくなるにもかかわらず、いま何が起こっていて、何を行うのかということ(たとえば更衣、整容、排泄など)を暗黙に理解することが出来たという、一見逆説的な効果が見られたということです。
この取り組みの特色は、認知症の高齢者の日常生活の普通の場面で行われること、そして特に音楽の訓練を受けていないスタッフや家族でも活用することが出来るという点です。
この取り組みの研究者、エヴァ・ヨッテルはスウェーデンのメーラルダーレン大学の教育者です。カロリンスカ研究所高齢者ケア研究所、ブレキンゲ工科大学において行われた研究をもとに「認知症の人と介護者のコミュニケーションにおける歌、BGMと音楽イベント」についての研究を2003年に出版しました。
1984年、エヴァ・ヨッテルは、高齢者のための長期ケア病棟で看護師として働いていました。病棟では、看護師長が、認知症の患者の記憶のトレーニングを担当していました。人気がある活動は、ダンスと歌でした。
エヴァ・ヨッテルは、朝食後に歌を歌うことで、患者がどのように楽しめるか知りたい、と看護師長に相談しました。
ヨッテルが食堂に座って歌い始めると、この歌が患者に劇的な影響を及ぼしました。患者の何人かは、すぐに部屋に入って来て、一緒に歌うことを望んだのです。さらに自分の部屋を出ようとしなかった他の患者が、歌のつどいに加わるために、スタッフに着替えを手伝って欲しいと頼みました。これが研究に着手する約20年前の出来事です。
エヴァ・ヨッテルは、この研究の結果、音楽の利用――ケアする人が歌うこと、お互いにBGMを聞くこと、ケアするときの音楽イベント――が、認知症の高齢者とケアする人の双方にポジティブな影響を及ぼすことを明らかにしました。
より具体的には、高齢者の能力――活力の利用、認識、言語、姿勢、知覚、認識、動作、課題実行、見当識、感情と気分――の向上が見られたということです。また同時に、高齢者の方が攻撃的になることも少なくなるということです。
エヴァ・ヨッテルは、ケアに「歌うこと」を用いることは、ケアする人にとって有効であると提言しています。
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